号頭言
「自然発症モデル動物の尽きせぬ魅力」
京都大学大学院医学研究科糖尿病・栄養内科学
稲垣 暢也
糖尿病の病態解明や治療に関する研究の歴史において、動物モデルが大きな役割を果たしてきたことはいうまでもない。膵摘糖尿病の発見は、1889年のMinkowskiとMeringによるイヌの膵臓全摘出実験にまでさかのぼり、この発見が後のインスリンの発見につながっていく。その後、1943年にはアロキサン、また1963年にはストレプトゾトシンによる化学的膵摘糖尿病が発見されて、糖尿病の病態に関する研究はさらに進んだ。このような2次性糖尿病モデルに対し、一方で、1950年代以降になり、NODマウス、KK/KKAyマウス、GKラット、OLETFラットなど、さまざまな1型あるいは2型の自然発症モデル動物が樹立され、糖尿病ならびに肥満の成因や病態の解明に大いに寄与した。そして、それらの樹立にわが国の研究者が大いに貢献してきたことは、わが国の誇りである。
さて、動物モデルの分野では1988年に画期的な論文がMario R. CapecchiらやOliver Smithiesらによって発表された。いわゆるジーンターゲティング法を用いたノックアウトマウスの作成である。この成果は、Martin EvansらによるマウスES細胞の樹立があって初めてなされたものであり、この3人の研究者が昨年(2007年)のノーベル医学・生理学賞を受賞されたことは記憶に新しい。このようなノックアウトマウス作成の技術は、トランスジェニックマウスやノックインマウスとともに、急速に広がり、20年を経た現在、このような遺伝子改変マウスを用いた研究はいたるところで見受けられる。つい先日私のところに届いた米国のある会社のカタログを見ると、900種類もの膜タンパクのノックアウトマウスが販売されていた。ついこのあいだまで教室員が何年もかけてノックアウトマウスを作成していた時代が嘘のようである。そして、これらのノックアウトマウス作成の技術は、今や医学や生物学の発展に欠かせない強力なツールであることはいうまでもない。糖尿病・肥満の研究においても、さまざまな遺伝子改変マウスが作成され、糖尿病や肥満に関わるさまざまな遺伝子の機能や病態における役割が明らかになりつつある。
しかし、このような科学技術が進歩したからといって、自然発症モデル動物の魅力は薄れるものではない。むしろ魅力は増していると言っても過言ではない。実際、私の研究室でも、さまざまな糖尿病自然発症モデル動物を現在も用いている。何故なのか考えてみた。一つに、多くの自然発症モデル動物は、多因子異常によるものであり、ヒトの糖尿病や肥満に類似していることがあげられる。現在のところヒトの糖尿病のうち単一遺伝子の異常で説明できるものは全体の数パーセントに過ぎない。多因子異常による発症メカニズムは複雑で、解明は未だに難しく、チャレンジングである。それ故に、モデル動物の糖尿病をヒトの糖尿病に見立て、それを謎解く研究の楽しさがある。しかも、自然が織りなす現象は我々の知恵をはるかに上回る。小泉昭夫先生がakitaマウスで明らかにしたインスリン遺伝子の異常は、結果的には単一遺伝子の異常によるものであったが、ただ単にノックアウトマウスやトランスジェニックマウスを作成するだけでは得られない意外性があった。次に、このような自然発症モデル動物を用いた研究者が、互いに研究成果を共有し、積み重ねていくことができるという点である。そのためには、できるだけ多くの研究者が、できるだけ同じ条件で動物を使用できる環境作りも大切である。その意味で、本学会の果たす役割は重要である。さらに、さまざまな自然発症モデル動物で糖尿病合併症が認められるという点である。特に糖尿病に固有の細小血管合併症については、治療戦略をたてる上で益々重要になると思われる。とはいえ、現状では糖尿病自然発症モデル動物は、ヒト糖尿病合併症のモデルとしては未だに十分であるとはいえない。大変な労力を要するとは思われるが、今後、さらによい糖尿病合併症のモデル動物が開発されることを願っている。
第23回日本糖尿病・肥満動物学会年次学術集会の開催にあたって
岡山大学大学院医歯薬総合研究科腎・免疫・内分泌代謝内科学
槇野 博史
第23回「日本糖尿病・肥満動物学会」年次学術集会は、平成21年2月13日(金)・14日(土)の両日に岡山市の岡山国際交流センターを会場として開催の運びとなり、そのお世話をさせて頂くこととなりました。
わが国は過去数十年にわたるライフ・スタイルの欧米化に伴い糖尿病や肥満が爆発的に増加して、今や国民病となっております。そのため糖尿病や肥満によってもたらされる、様々な合併症が問題となっております。糖尿病・肥満研究の進歩は目覚しいものがあり、画期的な新しい成果が報告されております。またこれらの疾患に対する動物モデルを用いた新しい研究成果が、日常臨床へと応用されつつあります。このように糖尿病動物は現代医療に多大な貢献をしているという背景から、昨年の第22回大会より「日本糖尿病・肥満動物学会」としてその名称を改め、研究会から学会として再出発をいたしました。このような、重要な時期に会長を務めさせて頂きますことは身に余る光栄で責任の重大さを痛感いたしております。
本学術集会のプログラムですが、特別講演者には名実ともに本学会を牽引されておられる理事長の門脇孝先生に御願いして、糖尿病の研究戦略をお話しして頂きます。もう一人の特別講演者として地元岡山大学消化器腫瘍外科の小林直哉先生が近年積極的にバイオ人工膵臓や肝臓を開発され活躍しておられますので、人工膵臓開発のお話しをして頂きます。
シンポジウムとワークショップには近年問題となっております糖尿病血管合併症、肥満・2型糖尿病と1型糖尿病を取り上げ最先端のご研究をされている先生に発表を御願いしております。更に食事の時間帯を有効に活用するためにランチョンセミナーを2つとイブニングセミナーを1つご用意して、研究と臨床の最新の情報を得られるようにいたしました。
私は生命予後を左右する糖尿病性腎症の発症・進展の機序の解明と治療をlife workとして実験動物モデルを用いて参りましたので、その内容で会長講演とさせて頂きます。
岡山市は中国・四国の交通の拠点で新幹線でも飛行機でもご利用になれます。市内には三名園の一つの後楽園があり、近くには烏城と呼ばれる岡山城もあります。ちょっと足を伸ばせば倉敷の美観地区や瀬戸大橋もあり、風光明媚です。瀬戸内の海の幸と美味しいお酒を用意しておもてなしをさせて頂きたいと考えております。
会場の岡山交流センターは岡山駅西口から徒歩3分の所にあり、駅からのアクセスの良いところです。多数の演題応募とたくさんの先生方のご参加を心からお待ちしております。
賛助会員の研究(10)
株式会社 森永生科学研究所の研究内容紹介
株式会社 森永生科学研究所
株式会社 森永生科学研究所は、森永製菓グループのビジョンである「おいしく、楽しく、すこやかに」の「すこやかに」を受け持ち、「すこやかさを科学する」を理念に事業活動を行う会社です。弊社では「すこやかさ」を科学的に測るための「モノ」として、糖尿病マーカータンパク質を測定するELISAキットを提供しております。株式会社 森永生科学研究所
糖尿病をはじめとした生活習慣病に対する研究開発が進み、動物実験の重要性が高まる中、弊社では1995年に「インスリン測定キット」の販売を開始いたしました。その後、インスリン測定キットよりも感度の高い「超高感度マウス/ラットインスリン測定キット」(測定範囲:0.1~6.4 ng/mL)、インスリン以外の病態マーカータンパク質測定キットとして「マウス/ラットレプチン測定キット」、「マウスIgE測定キット」も販売しております。これらのキットは、精度・再現性・感度ともにご好評いただいており、海外でも使用されています。
そして2008年秋には新製品として、「超高感度”PLUS”マウスインスリン測定キット」、「ネコインスリン測定キット」、「ハムスター標準品」をラインアップに加えます。
「超高感度“PLUS”マウスインスリン測定キット」は、従来の「超高感度マウスインスリン測定キット」をさらに高感度化したもので、0.025~1.6ng/mLの低濃度領域を正確に測定することができます。本キットは、絶食や遺伝的病態モデルのようなインスリン分泌量が低いマウスサンプルの測定に適しています。
また、「ネコインスリン測定キット」は、0.1~6.4ng/mLのネコインスリンを測定するELISAキットです。最近は犬・猫のメタボリックシンドロームが話題になっています。ペットの健康に関心が高まる現代、愛玩動物診断分野への事業展開にも注力いたします。
「凍結乾燥ハムスターインスリン標準品」は、ハムスターインスリン測定にご活用頂けます。「インスリン測定キット」、「超高感度マウス/ラットインスリン測定キット」で使用することができ、同シリーズの「凍結乾燥イヌ/ウサギインスリン標準品」と併せて、ラインアップを充実させました。ハムスターインスリンの測定は、ハムスターを用いた動物実験だけでなく、ハムスターのインスリノーマ由来培養株化膵β細胞を用いたin vitroの実験でも有効です。
これら製品のラインアップを増やす一方で、技術情報の充実も試みております。弊社ホームページでは、ELISAの基礎知識や製品の基本性能、キット操作のQ&A等をご紹介しています。お問い合わせ等についてもホームページより随時承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。また、ELISA操作を始められる研究者の方へは、キット取扱いガイダンスDVDをご用意しております。
弊社では今後もさらに、充実した製品のご提供と、それに付随する情報・サービス等の提供にも力を注ぎ、お客様に更なるソリューションをご提供できるよう努めてまいります。
株式会社 森永生科学研究所のホームページはhttp://www.miobs.com/です。
是非、ご覧下さい。
若手研究奨励賞を受賞して(1)
《受賞演題》
「ガラニン様ペプチドは内因性の発熱物質である」
昭和大学医学部第一解剖学教室
影山 晴秋
このたびは第22回日本糖尿病・肥満動物学会年次学術集会において、第1回目の若手研究奨励賞をいただき大変光栄であるとともに、身の引き締まる思いでもあります。受賞にあたり、摂食調節研究のご指導を賜りました昭和大学医学部の塩田清二教授、国立健康・栄養研究所の大坂寿雅博士、共立女子大学家政学部の井上修二教授ならびに共同研究者の皆様にこの場をお借りして御礼申し上げます。
受賞演題は「ガラニン様ペプチドは内因性の発熱物質である」であり、ガラニン様ペプチド(GALP)の熱産生経路を詳細に調べた研究です。GALPは1999年に視床下部から発見されたペプチドで、レプチンの下流に位置し、摂食抑制作用やエネルギー代謝調節などにかかわっています。そこでGALPのエネルギー代謝作用に注目し、GALP中枢投与後、熱産生の指標となる酸素消費量、深部体温、皮膚温を測定しました。GALPは熱放散せずに、体温を上昇させることが明らかになりました。熱産生にはプロスタグランジン系が深くかかわっていることから、内因性のプロスタグランジンの発現を抑制するために、その律速酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)の阻害剤を中枢に前投与したところ、GALPによる熱産生は抑制されました。さらに中枢におけるプロスタグランジン産生細胞の1つであるアストログリアにおけるCOX発現を検討するために、ラット胎仔由来初代培養アストログリアを用いて、GALP添加後のCOX-2遺伝子発現を解析しました。その結果GALP添加後2時間で遺伝子発現が増加しました。したがってGALPは脳内のアストログリアで産生されるプロスタグランジンを介して、熱産生をしている可能性が明らかになりました。
GALPは中枢性に作用し、エネルギー消費を促進させることを示したことから、今後は脳におけるGALPのエネルギー代謝シグナルの全容を解明し、抗肥満薬の創薬展開につなげられるよう今回の受賞を励みに研鑽を積んでいきたいと思います。
《受賞演題》
「肝臓特異的Irs2欠損マウスはインスリン抵抗性、耐糖能異常を呈する」
東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科
窪田 直人
このたびは日本糖尿病・肥満動物学会第一回若手研究奨励賞をいただくことができまして大変光栄に存じます。選考にたずさわってくださいました多くの先生方、今日に至るまで、温かく御指導くださいました多くの先生方に心より御礼申し上げます。
本研究では肝臓特異的IRS-1欠損マウス、肝臓特異的IRS-2欠損マウス、肝臓特異的IRS-1/IRS-2ダブル欠損マウスを作製し、解析を行いました(1)。非常に興味深いことに肝臓特異的IRS-1欠損マウスは再摂食後にインスリン抵抗性を、逆に肝臓特異的IRS-2欠損マウスでは絶食時にインスリン抵抗性を呈することが明らかとなりました。このメカニズムを解明するために、PI3キナーゼ活性のタイムコースについて詳細に検討したところ、IRS-2にassociateするPI3キナーゼ活性は絶食12時間から24時間で増加しさらに摂食直後に増加したのち、急速に低下しました。一方IRS-1にassociateするPI3キナーゼ活性は摂食2時間後から増加しました。この結果から肝臓のIRS-1とIRS-2には、絶食時と再摂食時において時間的な役割のリレーが存在し、 絶食時と摂食直後は主にIRS-2が、その後の再摂食時には主にIRS-1がそのシグナルを伝えていることが明らかとなりました。
今後もこのたびの若手研究奨励賞受賞を励みに、糖尿病・肥満モデル動物を用いた検討により2型糖尿病の分子機構の解明を一層進めて参りたいと思います。
参考文献
- Kubota N, Kubota T, Itoh S, Kumagai H, Kozono H, Takamoto I, Mineyama T, Ogata H, Tokuyama K, Ohsugi M, Sasako T, Moroi M, Sugi K, Kakuta S, Iwakura Y, Noda T, Ohnishi S, Nagai R, Tobe K, Terauchi Y, Ueki K, Kadowaki T.Dynamic functional relay between insulin receptor substrate 1 and 2 in hepatic insulin signaling during fasting and feeding. Cell Metab. 8:49-64, 2008.
《受賞演題》
「グルコキナーゼ活性化薬が糖代謝と膵β細胞量に及ぼす影響」
横浜市立大学大学院医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学
中村 昭伸
この度は、第22回日本糖尿病・肥満動物学会年次学術集会におきまして、若手研究奨励賞を受賞することができ大変光栄に存じます。理事長の門脇孝先生をはじめ、選考委員の諸先生方に厚く御礼申し上げます。また、実際の研究に際してご指導賜わりました、横浜市立大学大学院医学研究科分子内分泌・糖尿病内科学の寺内康夫先生をはじめ、日々ご支援いただいている諸先生方に深謝申し上げます。
近年、2型糖尿病において、剖検例で膵β細胞量が低下していると国内外で報告されており、2型糖尿病の病因を考える上で、膵β細胞の機能のみならず、膵β細胞量の調節機構を解明することが重要であると考えられるようになりました。糖尿病発症・進展における膵β細胞量調節異常への関心が高まっている中、われわれはグルコキナーゼの活性化が高脂肪食に伴うインスリン抵抗性下で治療上重要であるとの仮説に立ち、グルコキナーゼ活性化薬に着目しました。グルコキナーゼ活性化薬は膵β細胞でのインスリン分泌能増強作用と肝での糖利用亢進作用を有しており、新しいタイプの糖尿病治療薬として期待されています。その結果、高脂肪食負荷野生型マウスおよびグルコキナーゼへテロ欠損マウスにおいてグルコキナーゼ活性化薬の耐糖能改善作用が明らかとなりました。またin vitroのみならずin vivoにおいてもグルコキナーゼ活性化薬の膵β細胞増殖能増加作用が確認されました。現在、膵β細胞量の調節機構の全体像の解明と膵β細胞量調節薬の開発につなげるべく研究に着手しています。
今回の若手研究奨励賞受賞を励みとし、一層糖尿病研究・臨床に精進してまいりたいと思います。今後ともご指導のほど、よろしくお願いいたします。
《受賞演題》
「脂肪滴蛋白FSP27は白色脂肪細胞に単房性の脂肪蓄積形成を誘導することで
効率的な中性脂肪の貯蔵を可能にする」
神戸大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝・内分泌内科学分野
西野 尚延
このたびは日本糖尿病・肥満動物学会若手研究奨賞に選んでいただき大変光栄に存じます。思い返せば今回の“脂肪滴蛋白FSP27は白色脂肪細胞に単房性の脂肪蓄積形成を誘導する”に関するプロジェクトは平成12年にPPARγの発現で非常に大きく増減する遺伝子の一つとしてFSP27を同定したことに始まります。
当時、大学院に入学したばかりの私はFSP27の機能解析をテーマとして研究を始めました。機能については全く未知の遺伝子であり、また私自身も研究手法について何も分からない状態で途方に暮れていたのをつい最近のように思い出します。生体での機能を解析するためにノックアウトマウスの作成もほぼ同時に開始し、いろいろな先生方のご指導、助言を受け、なんとかノックアウトマウスの作成ができました。初めて検討したマウスの脂肪組織が著明に減少しているのが解剖時に肉眼的に確認できたときの感覚は今でも忘れられません。これで脂肪組織形成に重要な役割を持つ遺伝子であると初めて確信することができたものの、はたしてどのようにして作用しているのかは、さっぱりわからず、マウスができてからあっという間に4年という時間が過ぎてしまいました。この間にも非常に多くの方の協力を賜り、FSP27の機能を脂肪滴の形成に重要であるという結論に至りました。私自身、今回の学会がこのプロジェクトに関する初めての発表であり、機会を与えていただいたばかりでなく、このような賞を頂戴し8年間の苦労が形として現れ非常にうれしくおもいます。最後になりましたが、発表の機会を与えていただいた日本糖尿病・肥満動物学会の諸先生、関係者の方々、研究の指導をしていただいた春日雅人先生、田守義和先生ならびに協力していただいた全ての方に厚く御礼申し上げます。
《受賞演題》
「生体内分子イメージング手法による肥満細胞組織リモデリングと機能異常の解明」
東京大学循環器内科
西村 智
このたびは、第22回 日本糖尿病・肥満動物学会年次学術集会若手研究奨励賞に選出頂き、誠に光栄に存じます。このような権威ある賞をいただけることに関して、選考委員の先生方、学会関係者の方々、さらに、私をこれまでご指導して下さった方々に、この場をかりて心より御礼申し上げます。
私は、内科研修の後、平成13年に東京大学循環器内科に入局し、本学循環器内科永井良三教授、他多くの先生のご指導の元、研究を開始しました。当初は、心不全の病態解明を目指し、心筋細胞を用いた生理実験を進めておりましたが (2006 Circulation Research, 2006 Cadiovascular Research 他)、その過程で新たな生体イメージング手法を開発するに至りました。本手法を、代謝臓器である脂肪組織に適応し、本学糖尿病代謝内科 門脇孝教授にもご指導を賜り、研究の対象をメタボリックシンドロームにひろげていきました。そして、肥満脂肪組織における脂肪細胞分化・血管新生の可視化に成功しました(2007 Diabetes)。生体内分子イメージング手法を用いて、 内臓肥満における生体内での細胞動態の可視化に成功し、脂肪組織での慢性炎症に伴う異常な細胞連関を明らかにしました(2007 J Clin Invest)。現在は、さらに肥満に対するリンパ球や幹細胞の関与を明らかにすべく研究を進めているところです。このイメージング手法は実験動物を用いた基礎的検討のみならず、将来的には臨床応用も可能な手法であると考え、現在Translational Researchとしての可能性も探っています。今後、本受賞を励みにますます研究に邁進して行きたいと考えております。
最後に、これまで私の研究に、ご指導・ご支援を頂きました数多くの先生方、関係各位の皆様に、改めて御礼申し上げます。今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。