Vol.1 No.1 December 1997

日本糖尿病動物研究会News Letter創刊にあたって

日本糖尿病動物研究会
会長 後 藤 由 夫

 糖尿病の病態と治療は動物を用いる実験的研究により進められてきた。1889年の膵摘糖尿病の発見によって、成因と病態・治療に多くの知見が得られた。その後、各種実験的糖尿病が発見され、1943年アロキサン、また1963年にはストレプトゾトシンによる化学的膵摘糖尿病が発見されて、糖尿病の病態に関する研究は一挙に進んだ。しかしこれらは、いわゆる2次性糖尿病であって、糖尿 病の成因とnatural historyの解明には自然発症糖尿病実験動物が求められた。
 1950年代に肥満高血糖マウスが発見されて、その特異な代謝状態が注目されたが、やがてチャイニーズハムスター、そしてわが国ではKKマウス、yellow KKマウス、そして鯉の糖尿病も発見された。1970年代になるとBBラット、NODマウス、GKラット、NYSマウスなどが次々に発見、開発された。わが国では多くの糖尿病実験動物が発見されたので研究が一層活発になった。とくにNODマウスについては重要な知見が得られ垂井清一郎教授、挧野義博士のお世話で1982年より1985年まで、4回にわたりシンポジウムが大阪市で開催され、その成果はLessons from the NOD Mouseとして出版された。
 しかし糖尿病動物の研究会の継続を望む声が高く、幸いにも1985年より2年間、文部省科学研究費補助金による総合研究、モデル動物による糖尿病の成因と合併症に関する研究班が結成され、研究と情報の交換が行われた。この研究班員からは解散後も研究発表、情報交換の学術集会を継続したいとの希望が寄せられ、1987年1月に糖尿病動物研究会を開催、その後も会員の熱意によって継続されているのは誠に御同慶の至りである。第1回から第5回までは医薬ジャーナル社の御好意により単行本としてProceedingsを刊行、それ以後はメディカルレビュー社の御好意によりDiabetes Frontierに記録を掲載できたのは幸である。そして何よりも会をお世話いただいた方に心から感謝する次第である。
 わが国では現在もなお多くの糖尿病動物が発見されつぎつぎに新知見が報告されているのは、他国ではみられないことである。このようなわが国の特色、風土において本研究会が一層発展することを期待したい。

第11回 日本糖尿病動物研究会 -学術集会の世話人としての所感-

第11回日本糖尿病動物研究会学術集会長
東京慈恵会医科大学健康医学センター健康医学科 教授
池 田 義 雄

 平成9年2月7(金)8(土)の2日間にわったって第11回日本糖尿病動物研究会を銀座ガスホールを会場にして大変充実した内容によって開催できたことを心から嬉しく存じております。
 今回の研究会の開催に当たってLesson from animal diabetesを念頭に置き、昨今行われる通常の学会発表では得られ難くなっている、発表者、及び参会者間での交見が十二分に行われるように考慮しました。そこで、1演題は討論を含めて15分とし、座長の先生の御尽力を得て意図した成果が得られたものと確信致しております。今回は特別講演を2題企画し、国内からは駿河台日本大学病院循環器科・久代富志男先生に「動物モデルにおけるインスリン抵抗性と高血圧」を、また国外からはオーストラリア、Wollongong大学のStorlien L. H. 教授に「Dietary fat and insulin resistance -relationship to muscle triglyceride andω-3 fatty acids in muscle phospholipid- 」を、お話戴きました。Storlien教授とは、その後ヘルシンキで開かれた第16回国際糖尿病会議で再会し、短い滞在だった東京での体験、特に多くの先生方との交流が素晴らしかったとの感想を聞くことが出来ました。記念品として、公演中の顔写真を木製の写真立てに入れて後送させて頂きましたが、これが殊の外お気に入りで研究室の机上において楽しまれているとのことでした。
 さて、糖尿病動物研究会は10年を経て、名称を日本糖尿病動物研究会とし、新たな会則を制定し、会長・後藤由夫先生、副会長・金沢康徳先生、そして編集幹事を堀田 饒先生にお願いすることになりました。総勢10名による幹事会を柱とし、これに企業研究所などの賛助会員の代表を交えた産学協議会も設ける運びになりました。この他、ニュースレターも年2回発行していく体制も整えられたのは御同慶の至りです。
 これにより、新たな日本糖尿病動物研究会は学術集会を中心に産学協議会の活動も含め、Lesson from animal diabetesの精神を国の内外に発揮していけるものと考えます。なお今回の研究会では、初めての試みとして公開シンポジウムを行いました。大日本製薬(株)、日本セルヴィエ(株)の御協力を得て、研究会2日目の午後「モデル動物の成績からみた糖尿病性合併症の病態と治療」をテーマに、滋賀医大第三内科吉川隆一先生ほか5名のシンポジストにより、最新の研究成果とともに糖尿病性合併症についての考え方を披瀝して頂きました。この公開シンポジウムには会員のほか、多数のコメディカルを含めた医療のスタッフの参加があり、研究会の卓尾を飾ることができました。
 なお、これは余談になりますが、研究会終了後、銀座ガスホールの斜め前にある資生堂パーラー4Fにて、着席ビュッフェによる懇親会を催しましたが、この折りテレビや舞台でお馴染みの団伸也氏の友情出演があり、出し物の歌と酒脱な小咄は参加者一同を大いに満足させてくれました。
 以上のように、第11回日本糖尿病動物研究会は成功裏に終了することができました。これもひとえに、会員皆様方の糖尿病動物研究会に対する熱意と会活動に対する御協力の賜物と深くここに厚く御礼を申し上げる次第です。
 最後に、明年の本研究会は、このニュースレターにも案内が出ている如く、徳島大学医学部臨床検査医学・島 健二教授によって2月6日(金)7日(土)の2日間にわたって、大阪の千里サイエンスセンターにおいて開催されることになっています。又、再来年は京都大学病態栄養学・清野 裕教授による開催が予定されています。糖尿病学の発展のためにこの研究会が我が国の、そして世界の動向をリード出来る成果を挙げ続けていくことを願って所感と致します。

第11回日本糖尿病動物研究会 研究会報告

国立療養所東宇都宮病院 内科
森 豊

300人が参加
 第11回日本糖尿病動物研究会は東京慈恵会医科大学健康医学センター健康医科学・池田義雄教授を年次学術集会長として、東京、銀座ガスホールにて2月7日(金)、8日(土)の両日に開催されました。毎年本研究会には基礎と臨床の両分野から多数の研究者が出席し、糖尿病モデル動物を用いた多数の実験成績が発表され、活発な討論が繰り広げられています。さらに今年の研究会では、2月8日(土)の午後に、公開シンポジウムが開かれたこともあり、研究会の2日間及び公開シンポジウム合わ せての参加者は約300人に及びました。

インスリン抵抗性
 研究会の初日には、「糖尿病におけるインスリン抵抗性の機序をめぐって」というテーマで2つの特別講演が行われました。まず、特別講演1として「インスリン抵抗性:高血圧、肥満、食塩感受性のキーワード?」というタイトルで駿河台日本大学病院循環器科・久代登志男助教授より、インスリン抵抗性症候群やシンドロームXと動脈硬化性冠動脈疾患との関連性についての講演がありました。次に、特別講演2として本研究会では初めて、海外からの招待講演が行われました。オーストラリアのWolloongong大学、Lenstorlien教授は「Dietary fat and insulin resistance in skeletal muscle」というタイトルで、骨格筋とインスリン抵抗性の密接な関係とそのインスリン抵抗性に関与する因子として、食事中の脂肪の量や種類、特に多価不飽和脂肪酸や、運動の重要性についての講演をされました。
 今回の研究会は、例年にもましてup-dateな興味ある一般演題の発表が多々あり会場も熱気にあふれ、活発な討論が行われました。また研究会初日終了後に行われた懇親会では団しん也さんの楽しいトークショーがあるなど、盛会のうちに閉会しました。

公開シンポジウム
 研究会2日目の午後の公開シンポジウムでは、「モデル動物の成績からみた糖尿病性合併症の病態と治療」というテーマで以下の講演が行われました。
 「糖尿病性腎症の病態と治療」
  滋賀医科大学第3内科 吉川隆一
 「糖尿病性合併症におけるAGEの意義」
  北海道大学第2内科 牧野善二
 「糖尿病の神経障害ー診断と治療」
  東北厚生年金病院内科 鈴木研一
 「モデル動物の成績からみたアルドース還元酵素阻害剤の役割」
  小野薬品工業(株)  小川幹男先生
 「糖尿病における動脈硬化進展の機序と治療 -食後過血糖改善の意義-」
  国立療養所東宇都宮病院内科 森 豊

次回の本研究会は来年、徳島大学臨床検査医学教室・島健二教授を年次学術集会長として大阪で開催される予定であり、本研究会の更なる発展が望まれます。

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